優しい人、優しかった人

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「そうかな…。笠松くんは、大事な人にそんな思いだけはさせないでね。」 「…させないよ。オレは…よそ見なんかしないから…。」 “君だけを、ずっと見てるから。” 喉元まで出かかった言葉を、志信はグッと飲み込んだ。 (弱って酔い潰れてる相手にこんな事言うの…男らしくないよな…。) 「笠松くんの彼女は幸せだねぇ…。」 志信の気持ちも知らないで、薫はポツリと呟いた。 (その幸せな彼女にならないか?なんて…今の卯月さんには言えない…。) 薫の肩を強く抱き寄せながら、志信は薫の髪にそっと口づけた。 (オレなら…君を泣かせたりしないよ。一生幸せにしてあげるのに…。) “好きだよ”と言う事もできずに、志信はただ薫の肩を抱いて唇を噛みしめた。 (いつか…君が好きだって、言ってもいいかな…?)
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