切なさに身を焦がす夜

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自分の事を語ろうとはしない薫が、酔っていたとは言え初めて自分の過去の恋の話をした。 (会ってすぐに泣いてたり…話したくないって言ってたのに、酔って自分の過去の恋の話をしたり…もしかして、今まで誰にも話せなかったんじゃ…。) 薫の涙を思い出し、志信はいたたまれない気持ちで胸がしめつけられるように痛んだ。 (ずっとつらかったんだ…。多分、今も…。) それでも、泣いて名前を呼ぶほど、今でもその相手を好きなのかも知れないと思うと、またどうしようもなく胸が痛む。 (どんなに傷付けられても、まだ好きなのかな…。オレとその人を間違うくらいに…。) 過去の男なんか忘れて、今ここにいる自分の事を見て欲しい。 他の誰かを愛しながら、薫を弄び傷付けたその相手を許せない。 (オレじゃダメか…?オレだったら浮気なんてしないし、泣かせたりしないのに…。) 薫の気持ちは、薫にしかわからない。 どんなに好きだと言っても、拒まれるのかも知れない。 どれくらい想いを伝えれば、固く閉ざされた薫の心に触れる事ができるのだろう?
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