切なさに身を焦がす夜

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その頃。 薫はベッドに横たわったまま、ぼんやりと天井を眺めていた。 (昨日のあれ…なんだったんだろう…。) 夕べは随分酔っていたと思う。 気が付けば志信の腕の中にいて、同じタバコの香りがする浩樹の事を思い出していた。 (何か…まずい事言ったかな…。) 会社を出た時はあんなに優しかった志信が、薫が目を覚ました時には素っ気なく、その後はずっと機嫌が悪かった。 (情けないとか…悔しいとか…なんの事?) いい加減気付けよ、と絞り出すように切なげに呟いた志信の言葉の意味もわからず、薫はただ悶々として寝返りを打つ。 (いい加減気付けよ って…何に?) 志信が怒っていた理由がわからない。 何が“もう無理”だったのかもわからない。 ただ、別れ際の“じゃあね”の言葉が、やけに寂しげだった。 (私…笠松くんに何かした…?やっぱりわからない…。)
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