切なさに身を焦がす夜

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そろそろ夕食の支度でもしようかと、薫は冷蔵庫を覗き込んだ。 冷蔵庫の中の食材は残り少なく、缶ビールも2本しか入っていない。 (めんどくさいけど買い物行かないと飲めないしな…。ついでにタバコも買っとこう。) 薫は買い物に行くため財布の中身を確認して、夕べ志信に握らされた五千円札に目を留めた。 急に機嫌が悪くなったと思ったら、今までに見たこともない顔で叫んで、思いっきり抱きしめられた。 志信の切なげな声を思い出す。 (あんな笠松くん初めて見た…。) 次に志信に会ったら、とりあえずこの五千円札を返そうと薫は思う。 それから、やっぱりどうして志信が怒っていたのか、理由が知りたい。 もし自分の言動が原因なら、きちんと謝らなければ気が済まない。 薫はバッグに財布をしまって玄関で靴を履き、鍵をしめて買い物に出掛けた。
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