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薫が下を向いて歩きながら、ぐるぐると思いを巡らせていると、浩樹がポツリと呟く。
「あの時は…悪かった…。」
薫は何も答えず、ただ下を向いて歩き続けた。
浩樹は前を向いたまま話を続ける。
「彼女がいたのに薫の事が好きになって、本気になってた。彼女とは別れるつもりでいたのにそれもできなくて…そのうち子供までできて結婚する事になって…その上支社に転勤が決まって…結局オレは、薫に何も言えないままで逃げ出した…。」
浩樹の言葉を聞きながら、薫は何も言えないままで、唇を噛みしめた。
「ずっと薫に謝りたかった。でも勇気がなくて…何も言えなかった。」
マンションの前に着いても浩樹は足を止めず、ビールの箱を持ったままエントランスを通り抜けた。
「もうここでいいから…。」
「部屋まで運ぶよ。それくらいさせて。」
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