切なさに身を焦がす夜

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結局、浩樹に押しきられる形で部屋の前まで荷物を運んでもらい、玄関の鍵を開けて荷物を受け取った。 「もう少し、話したい。」 薫は浩樹の顔を見ずに、玄関に荷物を置いた。 「私は…今更話したい事なんてありません。」 「薫…。」 浩樹は強引に玄関の中に入り、ドアを閉めて、薫の手を握りしめた。 突然の事に驚いて、薫は目を見開き手を振り払おうとした。 しかし浩樹の手は、薫の手を掴んで離さない。 「お願いだから…話を聞いてくれないか。」 「……。」 薫は浩樹の顔を見る事も、手を振り払う事もできずうつむいた。 「ずっと薫に会いたかった。薫を忘れた事なんてなかった。」 「やめて…。」 「オレは、今でも薫の事が…。」
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