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止める事のできない涙が後から後からいくつも溢れ、浩樹のシャツを濡らした。
そして、浩樹の唇が、薫の唇に重なる。
(あ…。)
浩樹のキスは、昔と同じタバコの香りがした。
そのタバコの香りに、薫は無意識のうちに、志信の切なげな声を思い出していた。
“いい加減気付けよ、バカ…。”
薫は我に返り、浩樹の体を押し返した。
「帰って…。」
うつむいたまま小さく呟く薫を、浩樹はもう一度抱き寄せた。
「さっき言った事、本気だから…。考えておいて欲しい。」
「……。」
浩樹は玄関のドアを開けて振り返り、もう一度薫に口づけて去っていった。
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