切なさに身を焦がす夜

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薫が玄関のドアを閉めようとした時、少し離れた場所に立ち尽くしている志信の姿に気付いた。 (笠松くん…?!なんでここに?今の、見られてた…?) 薫は志信から視線をそらし、身動きもできないでいた。 志信がゆっくりと近付いてきて、静かに口を開いた。 「昨日の事…謝ろうと思って…。」 「え…?」 「あんな遅い時間にあんな所に置いてきぼりにしてごめん。オレもちょっと酔ってた。」 「うん…。」 薫は志信の手に握られた小さな紙袋を見て、できるだけ平静を装って尋ねる。 「買い物にでも行ってたの?」 志信は紙袋を隠すように後ろ手に持ち直した。
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