切なさに身を焦がす夜

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「今の人…昨日卯月さんが言ってた人?」 「え?」 「好きだ…って。」 そんな言葉を薫の口からはハッキリと聞いたわけでもないのに、志信はわざとそれらしく尋ねた。 「私…そんな事言ったの…?」 「うん…。良かったな…想いが通じて。」 「……。」 何も答えない薫に、志信は笑って手を振った。 「オレなんかといると、誤解されちゃうか。もう…誘わない方がいいかな。じゃあね。」 「待っ…。」 背を向けて歩いて行く志信を呼び止めようとして、薫はその言葉を飲み込んだ。 そして薫は静かにドアを閉めて、玄関にしゃがみ込んだ。 (呼び止めてどうするつもりだったの…?笠松くんには好きな人がいて、私は…。)
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