切なさに身を焦がす夜

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志信は自宅に戻ると、部屋の隅にネックレスと手紙の入った紙袋を投げつけた。 (告白もしないうちに失恋しちゃったよ…。結局、ネックレスも手紙も、無駄になっちゃったな…。) 床に座り込んでタバコに火をつけ、ぼんやりと煙を目で追う。 (もう…二人で笑いながら酒飲んだり飯食ったりする事もないんだろうな…。) 誰よりも一生懸命に仕事をして、飾り気のない薫が好きだった。 無愛想だと言われても、媚びたりお世辞を言ったりせず、正直で、少し照れ屋で、さりげなく気遣いのできる優しい薫が、どうしようもないくらいに好きだった。 二人でお酒を飲む時は、他の女の子と違って、変な気を遣う必要もなくて、ただただ楽しかった。 いつかは“同期として”じゃなく、一人の男として、薫の特別な存在になりたかった。
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