不器用な二人

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何年も閉ざしたままだった渇いた心が、ほんの少し、志信の優しさに傾きそうになっていたかも知れない。 だけど、志信には好きな人がいて、結局は“誰にでも優しい同期の笠松くん”でしかなかったんだと薫は思う。 (好きな人がいるなら、誰にでも優しくなんてしたらダメだって…。) 金曜日になると志信は、飲みに行こうとよく誘ってくれた。 一緒にいると、気兼ねなく食べて、飲んで、タバコを吸って、子供みたいにムキになってゲームで勝負して、たくさん笑った。 (楽しかったな…。) 同じ金曜日の夜なのに、一人部屋でビールを飲んでいるのは、なんとなく寂しい。 薫はタバコに火をつけ、ぼんやりとビールを飲みながら考える。 (元に戻っただけなのに…。)
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