不器用な二人

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「何も知らないうちに、私は都合のいい浮気相手にされてた。その上、何も言わずにいなくなった…。ちゃんとした別れの言葉もなかったんだ。」 薫は時おり悲しそうに目を伏せて、静かに話し続ける。 梨花はただ、黙って薫の話を聞いていた。 「もうあんな思いはしたくないって…2度と恋愛なんてしないって思いながら、必死で頑張って来たのに…。その人がまた本社に戻ってきてね…。今でも好きだから、もう一度付き合って欲しいなんて、勝手な事言うんだ。去年、奥さんと離婚したんだって。そんなの私には関係ないのにね…。」 「その事…笠松さんは知ってるんですか?」 志信の名前を聞いて、薫は唇を噛みしめた。 「笠松くんにも、他の誰にも話した事ないよ。ただ…もう一度付き合って欲しいって言われた後に、その人にキスされたところを、笠松くんに見られちゃった…。」 「そうなんですね…。笠松さんはなんて?」 「私、酔ってて覚えてないけど、その人の話をしたみたいなんだよね…。その人の事が好きだって言ったんだって。想いが通じて良かったね、って。誤解されるといけないから、もう誘わないって…。」
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