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リビングに持って行く気分になれず、私は夫婦の寝室へ移動した。
しばらく箱を見下ろしていたが、夕飯準備の途中であるし、いつまでもこうしているわけにいかない。
意を決して包みに手を掛け、ゆっくり丁寧に梱包を剥がしていった。
包み紙の中から、黒い頑丈な箱が現れた。
財布の時と同様、上から蓋を被せる形状の箱だ。
カポンと蓋を取り外すと、透明のハードプラスチックケース。
そして中には。
「……なんて、綺麗なんだろう……」
大輪の黄色いバラが、これでもかというほど束ねられたプリザーブドフラワー。
白い陶器に活けられた形で、容器の中に咲き誇っている。
私は黄色が好きだ。
あまりにも美しく、眩しく、圧倒された。
言葉を失って見入っていると、ふと、ケースと箱の隙間に遠慮がちに挟まれた封筒を発見した。
そっと取り出し、2つ折のカードを開く。
中には、送り状と同じ字体が並んでいた。
私はケースを抱えてリビングに走った。
普段子供達に『ドタバタ走るな』と注意する私が、全力でドタドタ走った。
「圭太っ!! これなに?!」
「は? なに? すげー顔」
私の顔を見た途端、長男は吹き出した。
余程ひどい顔をしていたのだろう。
それはそうだ、涙で化粧が溶けていたに違いないのだから。
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