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「はーい!!」
リビングからありったけの声を張り上げて、火元を確認してから玄関に向かう。
「はーいはいはい! どちらさーん!」
「お荷物お届けに参りましたっ!」
宅配便か。
誰かがネットで何かを頼んでいたのだろうか。
「サインでも構いません?」
「構いませんよー! えっと、鶴田春枝さんですね?」
「え、そうですけど、私宛?」
訝りながらも伝票にサインし、託された大きな箱を見下ろすと、確かに宛名は私の名前になっていた。
次の配送が押しているのか、飛ぶように駆けてトラックに戻る背中を見送った後、改めて送り状の【送り主】を確認する。
「……安野……優香里?」
って、誰だそれは。
友達にも親戚にも思い当たる節はない。
でも宛名は間違いなく私のフルネームが正しく記されている。
「………」
それにしても、随分重たい荷物だ。
割れ物シールも貼られている。
備考欄には、綺麗な字で【置物】と書かれていた。
安野。
安野、やすの……。
『……やすのゆかりです。よろしくお願いします』。
……あ。
思い出した。
息子の彼女だ。
心臓が逸り始めた。一体何事だろう、そしてこれは何だろう。
爆弾を手にした処理班のように、震える手で箱を持ったまま固まる。
いや、待てよ。よく考えれば今日は息子の誕生日だ。
つまり、これは息子への誕生日プレゼントなのではないだろうか。
高校生ならば、宛名を親にしてしまうミスも……いや、あるわけないか。
宛名を親にする必要があると考えるなら、普通は世帯主、つまり夫の名前で届くだろう。
従ってこれは、間違いなく『私』宛の物なのだ。
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