彼とわたしとビルエバンス

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彼とわたしとビルエバンス

カーオディオから流れるビルエバンス 「静寂を奏でるピアノ」 彼はそう言った 夜を走るヘッドライト 助手席で私はその響に耳を傾ける たとえばそれは霧の街 時折空から落ちてくる雨粒が私を濡らす たとえばそれは湖を渡る風 水面にさざ波を起こして過ぎ去る記憶 彼の言葉にふと我にかえる 何か言った? うん でもいいさ 今でなくても そう 彼を見つめ、窓から夜を見つめる いつの間にか雨になったようだ 優しく抱くような雨 車内を満たすピアノ 微かな雨音が静寂を彩る どこへ向かっているの? 彼は微笑み答える どこにも どこにも向かっていない どこにも行く必要はない どうして? 彼は微笑み答える どこにも行く必要はない だって 君がここにいるのだから ーENDー 題名の「Peace Piece」とはジャズピアニストのビルエバンスの曲名です。 訳すと、「平和な小曲」でしょうか。 ジャズミュージックの枠を超えた、静謐に満ちたピアノソロ曲です。
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