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週半ばということもあり、店は、それほど混んでもいない。
だが、ざっと見渡してみるも、まだ先輩の姿も見当たらない。
しかし、キョロキョロする私に気付いた店員が近寄ってきた時、
不意に背後の扉が開き振り向くと、そこに先輩の姿があった。
「おう、遅れて悪い」
それが、この日の彼の謝罪の皮切りだった。
すぐにも案内された席で向かい合い、まずは簡単な注文を終える。
そして、
「この前は、本当にゴメンな。
まさか、あんな風に、お前を巻き込むことになろうとは思ってなくてさ。
俺も、さすがに慌てちまって……」
おしぼりで手を拭いながら項垂れる先輩に、更に謝罪をされる。
だが私は、どんな言葉を返せばいいのか混乱していた。
だから、ただ「いえ……」と呟きつつ、かぶりを振るばかり。
そして、そんな私の目の前に戻ってきた先輩の顔には、
はっきりとした困惑と疲労が浮かんでいた。
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