8 嘘から誠は出ず(続き)

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「実は、就職して2年くらいは、俺も仕事に慣れるのに必死でさ。 正直、アイツとの事に構ってる余裕は、これっぽっちもなかったんだ。 けど、この春にアイツも大学を卒業してさ。 一応、親父さんのコネで知り合いの会社で仕事を始めたんだけど、腰かけ見え見えでな」 そして梅雨も明ける頃から、本格的に結婚話を持ち掛け始めてきたのらしい。 「でも俺、ちゃんとアイツの両親にも、俺の事情も気持ちも説明してるし、 いい加減うんざりしててさ。 この夏休みに、きちんとケリ付けようと思って、アイツ一家に話をしに行ったんだよ」 だが、どんなに小さくとも社長という立場の彼女の父と 平のサラリーマンでは力が違い過ぎた。 お蔭で、どんなに彼の事情を話しても、 簡単に解決法やら代替案やらが飛び出してきてしまう。 「だから、もう正攻法は無理だと思って、 新たに付き合う人が出来たことにして、俺を諦めてもらうように頼んだんだ」
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