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「一応、空港まで送って、とにかくあっちに帰る事に同意させるだけで、一晩かかった。
でも、朝一の便で帰るには帰ったけど、まだ別れることには同意してもらえてない」
それを聞いて、すごく気持ちがモヤモヤした。
そしてそれは、呑み込まずに声になる。
「あの、これからどうするんですか?」
先輩は、「うん……」と自分自身に頷くように呟いて、わずかに視線を落とした。
それから、手にしたジョッキをテーブルに置くと、ゆっくりと視線を戻してきた。
「もう、なあなあに出来るような話じゃないからな。
理由なんか何でもいいから、とにかく俺らが続かない事だけは
アイツの家族も含めて、納得してもらうしかないと思ってる」
そうですか。
私は、言葉だけで頷いた。
だが胸の内は、迷いや不安や訳の分からないものでモヤモヤが濃さを増す。
そんな私たちの間に、短い沈黙が忍び入った。
しかし、それを嫌うように、先輩からちょっぴり空元気気味に言われる。
「けど、もうマイカに迷惑かけることはねぇから。
今度の週末は、新しい食材での自主トレやろうな」
思わず、胸がキュッと詰まった。
だが私は、それでも「断らなければ」という心の声を無視して
やっぱり黙ったまま頷き返していた。
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