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サムさんの設立したギルドは混沌か中立かなと予想していたが、どうやら二分の一の確率で当たっていたようだ。中立らしい。秩序は絶対にあり得ないなと思っていた。
しかし何故、混沌ギルドでもないのにギルド名を教えてくれないのだろうか、都市警察にも目を付けられる心配はないのに。そうこう考えているうちに目的地に到着したようで、私達一行は緑のツタが巻き付く割と大きめな木造のアジトの前に立ち止まった。
すると、何やら扉の奥から騒ぎ立てる声が。
「もっとマシなメシ持って来いや馬鹿娘ェ!!!!」
「きゃあっ!!!」
突如としてアジトの脇から有り得ない音を立てながら壁をぶち破り、外へと追い出される一人の少女を視界の隅に捉えた。私は咄嗟に助けに動こうとするも、アオヤにがっちりと脚を捕まえられ身動きが取れない。まるで関わるなと言われているようだった。
「では中に入ろうではないか」
「そだねー」
「苺のショートケーキ、まだ残ってるかなぁ」
——皆総スルーなの…!?
さすがに可哀想すぎではないかと彼女の身を案じるも私一人だけでは何も出来ない為、救援を求めようとアオヤのフードを軽く引っ張った。
すると此方を見ようともせず、アオヤは負のオーラを撒き散らしながら想定外の返答をしてきた。
「世の中にはな……拾ってはならないボケも存在するんだよ…………」
訳が分からない。
必死の抵抗も虚しく力の差を見せつけられ、ねじ伏せられながら私はアジト内へ入っていった。
ごめんなさい、すぐに助けてあげられなくて。解放された時は真っ先に助けに行くから。
心の中でそう決心し踏み入った瞬間、空気がガラリと変わる。
肌にピリリと電流が走ったような感覚。人数こそ少なかったものの明らかに強者だけが醸し出す重たい雰囲気に、私達は圧倒された。
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