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――また、あの場所に行くのかな。
男の子は母親に差し出された手のひらを、ぎゅっと強く握った。
そっと触れられただけの手は、そうしないとすぐに解けてしまいそうで、不安だったから。
手を引かれて縁側を歩きながら、男の子は母親を仰ぎ見る。
「――ん?なぁに?」
母親はにっこりと微笑む。
笑ってもらえたことが嬉しくて、男の子は無邪気に笑い返した。
だが、すでに母親は前を向いていて、その瞳に男の子は映らなかった。
手のひらを強く握り返されることも、ない。
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