プロローグ

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中庭にある木々は色とりどりに花を咲かせ、鳥ののどかなさえずりが聞こえてくる。 やわらかな春の風に吹かれて、薄紅色の花びらが男の子の目の前でひらりと舞った。 ゆらゆらと漂う花びらを目で追いかけていると――。 「――あっ!」 「どうしたの?」 男の子は咄嗟に首を振る。 なぜそうしたのかは、自分でもよくわかっていなかった。 ただ――。 なんで、門の扉が開いているんだろう……。 いつもは怖い顔をした門番だっているのに、今日はいないのかな? いつまで、開いているだろうか……。 男の子は、ぼんやりとそんなことを思った。 「――ほら、着いたわよ、和馬」 それは、太陽の光がうららかに照る、昼下がりのことだった。 「……はい」 花びらがまた一枚、空へと飛んで行った。
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