忍び寄る影

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疲れているのに、眠れない。 あれから五条に散々説教をされた後、屋敷の中をぐるっと案内してもらった。 五条は「やらなくていい」と言ったが、「何かしていないと落ち着かないので」と半ば強引に夕食の準備を手伝って、部屋で一人食べた。 もうすっかり夜になっていた。 部屋の窓から外の月がみえる。 今日は三日月だ。 満月だったらまだマシだったのかな……。 冷たい風。 真っ暗な空の中で光るには、三日月はあまりにもか細かった。 帰りたい。 本当にこのまま、ずっとここにいるんだろうか。 考えれば考えるほど、理奈は居た堪れない気持ちになった。 我慢していた気持ちが、次から次に溢れだす。 ……会いたい。 「会いたいよ、雅くん……!」 理奈はその夜、声を殺して泣いた。
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