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朝食会の部屋に姿を現した漆間和馬は、今日は何も発しない。
途中、理奈の前で立ち止まった。
かと思えばこちらに近付いてくる。
――え?何?
理奈は咄嗟に考えようとしたが、頭がうまく回らない。
「理奈」
静かな部屋のなか、突然漆間和馬に声をかけられ理奈は動揺した。
腫れた瞼を見られたくなく、目を合わせられないでいると、頭上から低い声が響いた。
「昨日は、付き合わせて悪かった」
――!
「あ、いえ……」
まさか謝られるとは思わず、理奈はそう答えるだけで精一杯だった。
漆間和馬はそれだけ言うと、理奈に背を向け、再び自分の席へと向かった。
このとき、周りの視線が理奈に向いているのがわかった。
心なしか、華と菫の視線を痛いほど感じた。
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