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雅に案内された場所は、とても静かだった。
周りには、誰もいない。
「あの、雅さん……?」
「大丈夫ですよ。朝食会での態度に怒っている訳ではありません」
そう言って、雅は優しく笑った。
理奈は雅が笑ってくれたことに、思わずほっとした。
ほっとしたと思ったら、朝食会が終わるまで必死に堪えていたものが、一気に溢れでてしまった。
理奈の目から、大粒の涙がポロポロと落ちる。
理奈は溢れだす思いを、止めることができなかった。
「私、ここに来たくて来たわけじゃないんです」
気付くと雅に、自分の思いを話していた。
雅は黙って、理奈の話を聞いている。
「当主様に、連れてこられて。本当は――」
本当は、帰りたいんです、と言いかけたときだった。
「それは、どういう意味ですか?」
雅の低い声が理奈の言葉を遮った。
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