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「和馬様。そろそろ休まれてはいかがですか?」
漆間家の当主――和馬は、光東の南に位置する光彩からの帰りだ。
光彩を支配する鬼丸家の新当主――樹への挨拶を済ませてきたのだが……。
――アイツは本当に苦手だ。
樹の顔を思い出すと、途端に吐きそうになる。生理的に、いや、生物学的に合わないのだろう。
家来の結が休むよう声をかけてくれて良かった。結は和馬より十二歳年上だが、和馬が三歳の頃から面倒を見てくれている世話役だ。
「少し海の風にあたってくる」
馬から降りると、視界の先に見える海に向かい歩き出す。
長旅の疲れと樹のせいでイライラが募っていたが、少し休んだら気も紛れるだろう。
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