一目惚れ

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* 「和馬(かずま)様。そろそろ休まれてはいかがですか?」 漆間家(うるまけ)の当主――和馬は、光東の南に位置する光彩(こうさい)からの帰りだ。 光彩を支配する鬼丸家(おにまるけ)の新当主――(いつき)への挨拶を済ませてきたのだが……。 ――アイツは本当に苦手だ。 樹の顔を思い出すと、途端に吐きそうになる。生理的に、いや、生物学的に合わないのだろう。 家来の(ゆう)が休むよう声をかけてくれて良かった。結は和馬より十二歳年上だが、和馬が三歳の頃から面倒を見てくれている世話役だ。 「少し海の風にあたってくる」 馬から降りると、視界の先に見える海に向かい歩き出す。 長旅の疲れと樹のせいでイライラが募っていたが、少し休んだら気も紛れるだろう。
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