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波の音、潮の匂い。
ほんの数日離れただけの海が、こんなにも恋しかったなんて。
理奈は海に着くと、急いで辺りを見渡した。
「雅くん……」
いない?
今日は、お店の方だったのだろうか。
理奈が酷く落ち込んだ、そのときだった。
――!!!
「雅くん……!」
巨大な岩の後ろから、雅紀の姿が見えた。
「……誰?」
咄嗟に漏れた声は、震えていた。
雅紀は、理奈に気付かず、海辺から波打ち際の方に歩いている。
その隣には、透き通るほど白い肌、長い髪の女。
――嫌だ。
胸が、締め付けられる。
女は、初めは雅紀を見つめていたが、突然、理奈の方を向いた。
――!!!
目が合った。
そう思った瞬間、
女は理奈を見つめたまま、首をゆっくりと傾げた。
そして、笑った、ような気がした。
馬鹿にされたような、挑発されているような。
女のその不気味な笑顔にぞっとし、理奈は思わずその場から走り去った。
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