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「和馬様!」
走って海に来た和馬に、女が声をかけた。
和馬は少しだけ驚いた表情を見せたが、すぐに表情を元に戻す。
「もう、男の所に来てくれてたのか」
「はい。雅紀さんはつい先ほど、お店の方に戻られましたが」
「理奈は?」
和馬が、不安な表情をしている。
何が聞きたいのかが、女にはそれだけでわかった。
「はい。こちらにみえましたよ。理奈さんは雅紀さんに気付かれましたが、雅紀さんは気付いていませんでした」
そうか、と言った和馬の表情は、少し安心したようだった。
女は微笑みながら、理奈さんはあちらに行かれましたよ、と理奈の行った方向を指差した。
「ありがとう。助かった」
そう言ってすぐ、和馬は女の指差した方へ走って行った。
「和馬様……」
女は、和馬のその後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと見つめていた。
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