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「理奈ちゃん、これ外にお願い」
雅紀の母親に、串にさした醤油団子の載った皿を二皿手渡される。
理奈はそれを両手で受け取り、慣れた手つきで店の外へと運ぶ。
「お待たせしましたー!」
団子全体に醤油を薄く塗り、網で香ばしく焼き上げた醤油団子は、この団子屋の一番人気だ。
三色団子や蓬団子に比べると華やかさは劣るものの、お好みで海苔を巻くことも出来て、値段は断トツで安い。
店の外に置かれた縁台は、五人がやっと腰掛けられる程度の物だが、入れ替わり立ち替わり、毎日のように賑わっている。
そんなことより……。
――まったく!雅くんまたさぼって!
お昼時で忙しいというのに、雅紀の姿はない。
理奈は幼い頃に両親を亡くして雅紀の家に世話になって以来、雅紀の母親が営むこの団子屋を手伝っているのだけれど……。
雅紀はサボり魔である。
どうせまた海にでも行っているのだろう。
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