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いい子
公務員。
公務員。
公務員。
母は、公務員が聖職者だと思っている。
そんな胡散臭い神話を私は長年に渡って聞かされ、妹の就職が決まるまで試験を受けろと口うるさくいわれ続けた。
そう。
妹の就職が決まるまでは。
私は市役所の職員になる気はなかったので、あまりにうるさい母の気を鎮めるために仕方なく、形式上試験は受けたものの……鉛筆を転がして適当に解答欄を埋めるなどし、もちろん不合格。
2歳下の要領のいい妹の里佐子。彼女は、現役で地元市役所の正規職員採用試験に一発合格。それ以降、母が私に「試験を受けろ」ということはなくなった。
私の就職活動は連戦連敗。就活セミナーや合同企業説明会などのイベントに何度か参加するも、手応えはイマイチで、いつも最終選考で落とされてしまう。
私は大学を卒業する10日前に、何とか就職の内定がもらえた。
非正規ながらも、教育関係。地元の小学校で、不登校や相談室登校をしている子どもの支援をする仕事だ。
内定を得たとき、私にも実力でできることがあるんだ、とその時ばかりは達成感に満ちていた。
でも、それは束の間の喜び。
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