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「何、来て早々疲れてんのよ」
親友のゆめちゃんが私の机までやってくると顔を覗き込んだ。
「ああ……ゆめちゃん。バスに乗り遅れるし……水溜りにインしちゃって靴下までビチャビチャだし」
「ああ。だから靴下はいてないんだ、あはは」
「そう」
「でも、いきなり教室移動だよ」
「……ああ、めんどくさいなぁ」
私はノタノタと立ち上がるとゆめちゃんと廊下を歩いた。
「ね、誕生日だよね。今日は部活だから、明日! 明日ケーキでも食べに行こうよ。御馳走するよ」
「あはは、ありがとう……そうなのよね。誕生日だってのに何かテンション下がらことばっかり」
まあまあ。と、ゆめちゃんに慰められながら家庭科室へ向かう。
裏庭を横切った時だった。
「危ない!」
「え?」
ばいーん! と、音がしてサッカーボールが顔面直撃した。
「ナズナ!」
目の前に星が飛ぶって本当にあるんだ……と、しゃがみ込む。
「いたた……ほんと今日はついてない」
ヨタヨタとオデコを抑えながら立ち上がると男子が困ったように走って来た。
「すみません! 大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけないじゃない。ねぇ、ナズナ」
「あ~。大丈夫、大丈夫。私がぼけーと歩いてたのが悪いの」
「もう、そんな事言って! アンタ、サッカー部のくせにノーコンね!」
ゆめちゃんの言葉に男子は少しムッとした。
「ああ。大丈夫ですから」
「でも、おでこ赤くなってる。保健室」
「ああ。平気」
そういいながら片方の手をヒラヒラとふるとぐいっと掴まれた。
「当てたのは俺だけど、保健室行けよ」
「へ」
「女子なんだから」
「……」
グランドからその男子を呼ぶ声がした。
「オマエ、同じ2年だろ」
「え。ああ」
「悪ぃ、あとで」
ボールを拾ってグランドに駆けて行く彼を見て、ゆめちゃんは大きなため息をついた。
「なぁに、感じ悪い! アイツ、あれでしょサッカー部の島村。つーか、サッカー部のくせにノーコン!」
「ああ、うん。モテるよね」
「愛想ないのにね」
「そうなんだ」
「え。ああいうの好きだっけ?」
「好きとか嫌いとか、ないけど。悪い人じゃなさそうじゃん」
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