誕生日だからってイイことばかりがあるとは限らない

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私は彼にコロッケパンを差し出すと彼は嬉しそうに受け取った。 「ども」 「ううん」 彼は私に130円を渡してきた。 「今度、なんか返す」 「え、いいよ」 「俺。二組の島村」 「ああ……うん」 「シマムラタカシ」 「うん」 「オマエは?」 「あ……ああ、ナズナです。西本なずな」 「ふうん」 私は、どうしていいのかわからずに購買の横の小さなベンチに座った。 「ここで食うのかよ」 「教室まで戻って食べてる時間ないし」 「……もうそんな時間か」 シマムラタカシは私の横に腰掛けてパンを開けるとモグモグと食べ始めた。 特別何かを話すわけでもなかったけれど、隣に居られて不快な感じはしなかった。 あっという間にパンを食べたシマムラタカシはパックの牛乳にストローを差し込んだ。 「わ!」 「きゃ」 「悪い!」 「あ。大丈夫」 私の膝が少し牛乳で濡れた。 ビニールのショップバッグからタオルを1枚出すと私の膝に置いた。 「ちゃんと洗ってあるやつだから」 「え」 彼は立ち上がると首筋に手をあてて困ったように言った。 「今日は、どうも調子が悪い」 「へ」 「ああ……いや……朝から、どうも」 私は彼を見上げて笑った。 「私も、今日は朝からずっとダメダメ。水溜りに突っ込むし、バスは乗り遅れるし。ボールには当たるし、宿題のノートは忘れるし」 「……はは。俺も似たようなもんだ……ダメな日ってあるんだよな」 「そう、あるんだよね」 愛想がないのかと思ったけれど、シマムラタカシは思いのほか可愛らしい顔をして笑うんだと思った。
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