誕生日だからってイイことばかりがあるとは限らない

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「じゃあ。また」 「あ、うん」 彼は短い髪をカシカシとかいて軽く手をあげると廊下を歩いて行った。 ゆめちゃんは不愛想だっていったけど、かわいいじゃない。と、思いながら彼の後姿を見送る。 男子が彼に声をかけて、何か話しながら歩いて行く。 キラキラとした笑顔にきゅんとした。 「あんな顔もするんだ」 午後の授業は眠さと空腹で死にそうになりながら終えた私は事もあろうに掃除当番だった。 「はぁ。ついてないなぁ」 ゴミ捨てジャンケンにも負けて焼却炉へ向かっていると声がかかった。 「ちょっと、あんた」 「はい?」 「ねえ。シマムラに何ちょっかいかけてんの?」 「は?」 「一緒にお昼とか食べて、何アピってんのよ」 「はぁ?」 シマムラタカシの事を言っているのだろうが、この女の子はなんなのだろうと首をかしげる。 「何とぼけてんの」 「いやいや、べつに。たまたま購買で一緒になっただけだし」 マジで絡まれるとかサイテーだ。 「ふざけんな」 そう言って肩を押された瞬間、グラリと体が反り返って視界に天井が映った。 ああ。 やばい、落ちる。 「……っと」 どん、と背中を支えられて起こされる。 顔面蒼白のいいがかり女を見て、ふり返るとシマムラタカシがいた。 「オマエ、何? コイツ、なんもしてねえだろ」 「だ。だってシマムラに近づこうとしてアピってさ」 「……アピったのは俺だけど」 彼女は大きく目を見開いた。 どういう意味だろう……もしかして。いやいや、そんなとこんな状況で色々と考える。 「俺が、コイツにアピったの。だから、邪魔すんな」 ふん!と踵を返して階段を降りて行った彼女がいなくなると、シンとした廊下に私の心臓の音が響くような気がした。 「え。えっと……助けてくれてありがとう」 「おまえ……ほんと、今日はついてねえな」 「そうだね。あは。あははは」
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