誕生日だからってイイことばかりがあるとは限らない

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彼はTシャツの裾でぐいっと首筋の汗を拭くと、小さなため息をついた。 「部活いったんだけど、教室に忘れものして」 「そか」 「マジ、ついてねえと思ったけど……そうでもなかったな」 「え」 「……」 彼は小さな溜息をもう一つはいた。 「俺、今日、朝から調子悪いっていっただろ」 「ああ。うん」 「誕生日なんだよ、今日」 「え……誕生日?」 「そ、誕生日にこんだけついてないとか、マジありえねえわ、って思ってたけど。オマエと話すきっかけも出来たし、悪い事ばっかりじゃねえな」 「……」 困ったように瞳を動かした彼に私は言った。 「あ、あのさ。私も誕生日なの。今日」 「……マジで?」 「マジで。朝の占いでアンラッキー星座とか言われて、ついてない一日だと思ったけど……そうじゃ、ない? の、かも」 シマムラタカシは頬を染めた。 「……部活。今日は自主練だから、1時間ぐらいで終わるんだ」 「うん」 「……よかったら、話さねえ?」 「うん」 私は図書室で待っていると告げると教室に戻った。 「……ついてないの?」 恋とかそう言うのじゃないかも知れない、でも、彼の事をもうちょっと知りたいと思っていた。 不思議な感情が躰をぐるぐるする。 「そんなに悪くない、誕生日かもね」 私は、図書室で彼を待った。 なんだかとっても素敵な事が起こりそうな、そんな予感がしていた。
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