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「古今東西子どもが読みます物語というのはどれもこれも美しいものばかりでございますわね。女がしなだれかかるようにして僕にそう言った。
「確かに確かに。しかし仄暗い物語なんぞ純真無垢な子供らには毒だろう。」少し離れたところから銀髪の老紳士が話しかけてくる。僕は黙って耳を傾ける。
「私美しいものこそ毒だと思いますの。」女が指先で髪を弄びながら続けて言う。「純真無垢な世界など何処にもないでしょう?」
「確かに確かに。美しい幻想は人を狂わせる。丁度貴方のように。」銀髪の老紳士が僕に向かって恭しくお辞儀をする。彼に答えるでもなく、弄ぶ髪を僕のものに変えた女をぼんやりと見つめる。
そして僕は思考する。
意味もなく、理由もなく、 終わりもなく、
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