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暫く辺りをぶらぶらしていると女に声をかけられた。
「私今日で最後にしようと思うの。」ギュッと握りしめた拳が決意の固さを物語っている。
「このまま此処にいてはいけないと思うの。」今にも泣きだしそうな顔をしている。
「だから今日で最後。最後だから貴方に一言挨拶したくて。」大粒の涙が零れた。
「さようなら。」そう告げて遠くへ、とても遠くへと女は歩き出した。
「さようなら。」彼女の姿が見えなくなってから静かに別れを告げた。律儀な人だ。此処を去る時に挨拶に来る人間はそんなに多くない。
「貴女に幸せがありますように。」もう一度だけ振り返って、歩き出した。
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