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抱きたい──
そう思って戻ってきた。
食事が済めば他の女に用はない──
この躰の猛りは我が愛しい永遠の贄。
ルナにしか鎮められない。
ルナはピクリと肩を揺らし、唇を噛んで漏れそうな声をこらえる。
「ルナ…」
起こしていた躰をまた倒し、ゆっくり首筋に潜り込んだグレイの息の荒さが肌に伝わってくる──
乱れた呼吸、そして熱を帯びたグレイの肌──
いつものグレイと何処かが違う。
「ルナ……っ」
「………っ」
耳に唇を押し当てて躰をまさぐり始めたグレイの声は、ルナの名を苦し気に口にしていた。
ルナは熱で掠れたそのグレイの声音に目を見開いた。驚くように大きくしたルナの瞳にじわりと涙が滲んでくる。
胸元に顔を擦り付け、肌に唇を這わせ始めたグレイの仕草にルナは唇を震わせると、大きく頬を歪めてグレイを抱き締めるようにしがみついていた。
冷静さも意地悪な瞳も無くしたグレイがルナを抱くことに夢中になっている。
ルナはそんなグレイを感じて胸を震わせた。
嫌いになりたいのになりきれない──
この人はこうやって抱きながらまた、冷たくするに決まってる。
もしそうなら──
また冷たくなったなら…
その時は──
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