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ほんとは幾つかわからない。だが見た目はルナの歳とそう変わらない──
リドリーに手を牽かれて会場玄関の扉を抜けるとリドリーはルナの手を自分の腕に絡ませた。
慣れた仕草でリドリーは社交場の中へ入っていく──
入り口で先程グレイに話し掛けてきた男と目が合うと、男はルナにさもお似合いの二人だというような視線を向けてウインクしてきた。
ルナは咄嗟に顔を逸らして目を背ける。
優しいリドリーになんだか胸が疼く。若いのにとても場慣れしている雰囲気に、ルナは微かに尊敬の目を向けていた。
「踊る?」
「──……」
顔を覗き込んで急に問われ、ルナは首を横に振った。
「少し教えてもらっただけでまだ踊れないから……」
ルナは俯いた。確か本場の社交界で踊る約束をグレイとしたはずだった──
“次のハーフムーンには私とダンスを──”
グレイにしっかりとそう申し込まれていた筈なのにグレイはこの場に一人置き去りにした。
確かに今夜はまだ三日月。
ハーフムーンではない──
まだ一緒に踊るのは先だということだろうか。
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