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「どうしても君に近付きたい──…」
「………」
「何故かそう思うんだ……──たとえ、グレイ様にどんな御叱りを受けようとね……」
「───…」
考え込んだルナを覗き込み、躍りながらリドリーは自ら先にそう答えた。
「君の血のせいだ──」
「……っ…」
「……って僕も最初はそう思った…」
「───っ…」
リドリーは意味深に言葉を切るとピタリと動きを止めてルナの頬に手を添える。
リドリーはルナを見つめて小さく口にした。
「でも……血はなくてもいいかな…って思い始めてる…」
「……!…」
そう言ったリドリーの顔が少しはにかんで赤い。
いつの間にか会場の隅の窓際に連れて来られていたことに気付いたルナを、リドリーは外界の視線から隠すようにシャッとビロードの赤いカーテンで囲った。
急に周りが薄暗くなる。
窓からは弱い月の光を受けたリドリーの表情が微かに艶めいていた……
リドリーの手がルナの頬を愛しそうに包んで親指で唇をなぞる。
そうしながらリドリーはその指でルナの額を指差していた──
「なぜ君はグレイ様のものなんだろうね……」
「──…」
ルナの額に浮かぶ十字の影。うっすらとリドリーの瞳にグレイの私物の証しが映り込む──
リドリーはそう溢しながらまたルナの頬を指の甲で撫でる。
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