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打ち付けるように時折、腰を突き上げて上にいる夫人を哭かせている。
グレイのその行為にルナははっと口を両手で抑えた──
「──…!」
グレイはふと何かに気付いたように扉に顔を向ける──
「覗きか…」
隙間の開いた扉を見てグレイは小さく呟いた。社交場ではよくあることだ。
下半身が役に立たなくなった老紳士の覗きは社交場での当たり前のたしなみでもある。
だが、捕食行為を見られてはまずい。グレイはそう思いながら手を軽く振って隙間の開いた扉を魔力で閉め掛けて動きを止めた。
見覚えのあるドレスの裾がちらついている。
グレイは指を動かして閉め掛けた扉を少し開いた。
「───…」
開いた扉の向こうで口を抑え突っ立ったままのルナが居る。
グレイは微かに眉尻を動かす。だが直ぐに無表情の冷たい視線を向けてルナを追い払うように手を揺らした。
ルナはグレイのその扱いに顔を酷く歪めて唇を噛む──
そしてそこから背を向け踵を返した。
ルナの足音が小さくなっていく──
「…はあ…っ…グレイ?」
「鼠が覗いていたようだ」
動きの止まったグレイを上から伺う夫人に、グレイはふっと作り笑みを浮かべて返す。まあっ、と驚く夫人の背中に腕を回すとグレイは妖しく笑った。
「冗談ですよ…誰にも見られてはいません」
クスクス笑いながら夫人の後頭部に手を添えて引き寄せるとグレイは深く口付ける──
そしてまた腰を揺すぶり始めた。
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