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「ルナっ…ルナ!待ってっ」
ショックで口を抑えたまま会場を出ていこうとしたルナを、リドリーは背中から羽交い締めに抱き締める。
「あれは何っ──…」
「捕食行為だよ…」
「捕食っ…」
リドリーは顔を歪めて震える声で聞いたルナの手を牽いて外に出る。
「吸血する前に獲物の血を高める行為──…」
「吸血っ…」
リドリーは口を抑えていたルナの手をどかせた。
「グレイ様が捕食する前に君もしてる筈──…僕とも前にしたことがあったのを覚えてない?」
「……っ…」
ルナはリドリーに言われ、赤くなって口ごもる。なんだか複雑な心境だ。捕食の為だと言われて簡単に納得できるわけではない──
リドリーは困惑したままのルナの顔を上げさせる。
「極上の血を持つ君を手にしてるのに何故グレイ様は他所で獲物を狩るの?…」
リドリーはルナを覗き真っ直ぐに問い掛けた。
「そんなのっ…あたしだって知らない──」
そう、何故かなんて知らない…
あの人があたしの血を求める時はいつも決まっている日がある──
身体から勝手に流れてくるその時に、そこからしかあの人はあたしの血を口にしない──
目を逸らして思いを巡らせるルナの頬をリドリーはまた撫でる。
「じゃあ…グレイ様は怖いんだ──」
「怖い……?」
リドリーは頷いた。
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