エピローグ 2017年8月8日

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エピローグ 2017年8月8日

「あ、飛行機雲」  8月の真っ青な空に白いクレヨンで線を引いたように、すーっと伸びてゆく。午前中だというのに目もくらむ日差しだ。 「さてと…今日も頑張るか」  京介はカフェの通用口を大きく開けて荷物を運び込む。 「おはようございまーす!手伝います」 「や。水野さん、早いね。助かるよ」  この春に雇ったパティシエ、水野が元気よく挨拶してきた。 「スイーツの味が落ちたとか言われたら一子さんに合わせる顔、ないですから!」  水野のスイーツも好評だ。この調子だと今年も夏のスイーツフェアは予定通りに開催できそうだ。 「いやいや。水野スイーツ。物語があるよね。七夕ゼリーとか美味しかった」  野菜を運びながら言った。 「そうですかー?嬉しいです」  一息ついたところで電話が鳴った。 「あ…ごめん。雅彦?」  水野が息を詰めて電話する京介を見つめている。 「女の子?おめでとう!」  水野が声を出さずに万歳をして飛び跳ねた。 「で?一子は無事か?ああ…篠には俺が連絡するよ。 いよいよ父親だな雅彦。俺も篠もおじさんかーなんだか信じられないな」  世界にあふれている疑問は解けないし、割り切れない事も多くある。子供の頃に描いていた大人とは違ったものになったけれど…種は芽吹き、人は生きる。  クインテリオンか。篠。お前のおかげで幸せだと思える日が来たよ。  大きく開け放った通用口から夏の風が爽やかに吹き抜けていった。 了
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