第一話 ファースト・ライト

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      scene1  寝起きは、悪くない。  だから、目覚めた、という自覚はしっかりとある。  しかし、まだ眼は瞑っていた。  目覚め際の、この睡眠と覚醒の間を彷徨っている感覚を暫く味わうためである。それは睡眠という生理的な義務を負わされた生物に与えられた数少ない快楽の時間だ。なるべく長く堪能したいと思うのが人情である。  布団の中で夢見心地の時間をウダウダと堪能していた。  布団の中? 肢体からの感覚に違和感があった。心地よい布と綿の感触を感じないのだ。全身にラップを巻かれているとでも云えばよいのか、皮膚感覚が鈍い感じがした。  違和感の原因を確認するために、仕方なく瞼を開く。  焦点が定まる。  見知らぬ部屋。  いや、それ以前に、此処は部屋と呼べるのだろうか?  天井は、お世辞にも「天」の字に見合うほどの高さがない。手を伸ばせばペタペタと触れそうだ。壁も、身体の両側に触れてしまうほど近い。挟まれていると云っても良い。  記憶を眠りに落ちる間際まで辿ってみる。  確かに、自宅のベッドで寝たはずだが…今は、カプセルホテルのような狭小のスペースに身体が収まっている。カプセルホテルを知らない、というのなら、ウナギを捕まえる仕掛け…竹筒漁(ツツッポ)に捕まっているウナギを思い浮かべて貰えば良い…いや、余計に分かりづらいか? 兎に角、日頃、閉所恐怖症ぎみである事を自覚していたので、ややパニくった。  そうか、夢だ。と、冷静さを自分に押しつけて言い聞かせる。夢の中で、それを夢と自覚するのは精神衛生上良くない傾向だと、どこかで聞いた覚えがあるが、この際、積極的に無視する。既に狭い空間に押しつぶされる恐怖で過呼吸気味だ。  速やかに目覚めねば。  覚醒を促す為、本能的に眼を擦ろうと手を上げた。  …。…。上げようとした。  だが、手が動く感覚の代わりに、ザワザワという音が聞こえる。いや、何かがざわつく雰囲気を感じる、が正しい表現か。  身体を見下ろす。  次第に眼の焦点が合ってくる。 「!」
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