宇宙環境保全局 ダークマター排出削減課

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    Line A / Side B1  物理的な肉体を持っている者が外を眺める為に船の舷側に設えられた「窓」という穴から、船外にレンズを向けた。  画角の半分ほどを渦巻き状の銀河系が埋めている。今回の任務の目的地だ。 「なんだい、それ」  背後から声を掛けられる。少しビクッとした。私のような精神生命体は、物質義体を通した物理的な刺激には、なかなか慣れない。特に音。 「今回の任務地にね、前回の調査で立ち寄った時に見つけた原始的な光電磁波記録装置。内部装填した有機膜に流布している薬剤とレンズ状に加工した二酸化ケイ素のアモルファス体を通して焦点させた光子を化学反応させて記録するのよ」  手にしていた工作物を、音の発生源であるの物質義体に掲げながら振り向いた。その物質義体、固有名イヴォンは怪訝な顔をした。 「…何のために?」 「二次元映像を残すため」 「物好きだなぁ。そんな不完全な映像を、そんなに手間かけて記録するなんて、何が面白いんだ?」 「重力制御していない乗り物で惑星表面から宇宙空間へ飛び出すような快感?」 「なんだい、それ」
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