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どんなに科学万能の時代に生きていようとも、この世の摂理を支配する存在であらざるこの身には常に慢心がつきものだ、と再認識させられる。インターフェース義体に、間違って他の炭素生命体文明に対応したプログラムをインストールしたらしい。
義体のセーフティが事故対応の自動修復動作をした為、該当者との初期コンタクトで、相手に不信感を抱かせてしまった。あれだけ万全を期したのに、全く以てケアレスミスは無くならない。
でもまあ、うん、まだ報告書には書かないでおこう。
もしかしたら、このコンタクトは無かった事になるかも知れないのだから。
Line A / Side A2
ソフィアとイヴォンの二人が人類と接触してから、三十年後、彼等の技術協力によってタイムマシンは完成した。その見返りとして汎宇宙連合の希望に則り、このタイムマシンは人類の正しい歴史認識のみに使用される。
観測、記録用の無人探査機(これも彼等からの技術移転だ)を過去に送り、その探査機は過去の事実を主に音声映像で記録すると、そのまま一度宇宙空間に出て、なるべく地球の歴史に影響しないように、遠距離の長円軌道で宇宙空間を航行して「時間をつぶした」のち、然るべき時、つまり自身が送り出された時代になってから、再び地球に戻ってくるようにプログラムされていた。
そして、最初の探査機が無事帰還したというニュースを病院のベッドの上で聞きながら、私、時佐田守(まもる)は、人類初のタイムマシン開発者という名声と共に八十年の生涯を閉じた。
「正しき過去が、より良き未来を人類にもたらさんことを」と、願いつつ…。
Line A / Side B2
現地知性…いえ、地球人類初のタイムマシンが無事稼働したのを見届けた後、彼等の自主運用を見守る為、私はイヴァンと共に『観測機』に搭乗した。
この中で、人類が約束通りにタイムマシンを運用するかどうかを見守るのである。とはいっても、実際に見守るのは観測機の人工知能だ。
我々は義体を凍結保存して劣化防止処理をした後、精神知性体にもどる。精神知性体は、四次元的干渉、すなわち時間経過に影響されない。いわゆる不死なのである。これが、この任務を私達が担当した理由だった。
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