宇宙環境保全局 ダークマター排出削減課

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      Line A / Side B3    人工知能監視ログ   地球時間十年経過 --- 数万機の探査機が回収され人類の正確な歴史がほぼ確定された。  次の段階として、人類出現以前の時代へ探査機を送るべく、より高出力なタイムマシン建造が決定された。一方で、もたらされた歴史の真実は、それまで様々な独裁者や国家、宗教の思惑で歪められプロパガンダされた歴史を信じていた人々には到底受け入れがたいものであり、せっかく確定された正しい歴史を強制的に修正しようとする勢力が世界中のあちらこちらで現れ始めていた。  地球時間五十年経過 --- 転送量、転送可能時間を大幅に改良された大型タイムマシンが完成。しかし、数十年前から台頭してきた歴史修正主義勢力によって世界情勢は混沌としていた。それは3度目の大きな世界大戦の火種にもなりかねない状況だった。  地球時間…混沌の一歩手前 ---綱渡りのような危うさで、汎宇宙ダークマター削減会議議定書を遵守してきた地球文明だったが、ついにタイムマシンが歴史修正勢力の手に落ちた。  見窄らしかった歴史をプロパガンダ通りの栄光ある姿に改変しようとする国家、より良い条件の逃避先として過去の改変を選択する虐げられた歴史を持つ少数民族等々、例え汎宇宙連合にペナルティを課せられようとも、過去への渡航を渇望する人間達が、まさにタイムマシンを稼働させた瞬間、履行違反を認知した人工知能が、ソフィアとイヴォンと共に観測器を過去へとジャンプさせた。
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