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Line B / Side B
私とイヴォンは、保存してあった物質義体と再度融合し観測機から出た。もちろん近くに地球人がいない事は確認しているが、もし誰かが、この瞬間を目撃していたならば、何もない空間に突然四角い穴が開いて人間が出てきたように見えただろう。
ただ、地球人はいないが、私達の前には私達がいた。
正確には、過去の、時佐田の講演会場に向かっている、私とイヴォンのインターフェース義体だ。
これも実験シナリオの一部なので、我々の姿を認めた時点で彼等も事情を了解しただろうから簡潔に言った。
「残念ながら、実験は失敗です」
私と同じ顔をした物体は答えた。やっぱり物質義体は嫌いだ。
「 りょう かい」
途切れ途切れの返答を聞きながら、『ああ、そういえば、やっぱり報告書に書く必要はなかったな』と思いつつ、素粒子分解銃で彼等の存在を量子レベルで消去した。
これで、彼等が時佐田に会った時間軸が消え、今、この宇宙が主軸時間流となった。タイムマシンを実現した地球文明は、あらゆる時空、時間軸から消失したのだ。
もちろん、我々がこの時代に戻ってきたタイムトラベル分の時間分岐エントロピーが増加してしまったが、それによって、新たに発生するダークマターとエネルギーのエントロピー増加分量は、地球人類が無秩序にタイムトラベルする時間軸によって発生したであろう分量に比べれば、大海原に落ちたインク一滴にも満たないだろう。
私とイヴォンは、地球に乗って来た船に戻った。
私達の報告を受けて、直ぐに後任者がやってくるだろう。歴史の陰から間違った科学情報を与え続けて「地球文明が永遠にタイムマシンを実現しない未来」へと導いていく宇宙環境保全局の実務担当者が…手始めの仕事は、この宙域へのWIMPモドキの散布あたりだろうか。
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