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煉瓦作りの歴史ある美術館に向かうのに、クラッシック音楽のコンサートに行くときのような少しだけお洒落な格好をする。
アクセサリーは、友次の手作りによる銀細工のペンダント。昨年のデザイン・コンテストで優秀賞を受賞したものだ。もらって良いのかと確認すると、最初から私にプレゼントするために創ったものだからと笑顔で渡された。嬉しい反面、もの凄く照れ臭かった。
美術館に到着すると、招待状と同じデザインのポスターを目印に、展示会場へ向かう。アイドルグループのライブなどと違って、観覧者の数はまばら。大きく立派な建物の重厚感に圧倒されながら、歩みを進める。ここだという一角を見つけて、中に入った。
その広いギャラリーは壁も床も真っ白で、眩しいくらいの白い光に照らされていた。まずはその明るさに目がくらむ。
真っ直ぐに部屋の真ん中を見た。白い床の上、十メートル四方ほどのスペースに直接、サイズも形も異なるあれこれのものが整然と、パズルのコマを当てはめたように平衡または直角に置かれていた。スケールを贅沢に使用したパフォーマンスだ。
目を見張るのは、カラーコーディネート。手前の透明から黄色、オレンジ、赤、紫、青、緑、茶色、黒と、奥に向かってカラーサンプルのようなグラデーションを見せる。
白い空間の中に選択したアイテムを意図的に配置し、色彩を浮き立たせて見る者の目を引き寄せる。空間に取り込まれることによって作品を体感する芸術。インスタレーションと呼ばれるジャンルに属する。友次はこの分野で日本にとどまらず世界にも名を馳せる第一線のアーティストなのだ。
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