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「友美、来てくれてありがとう」
振り返ると、ニッコリと目を細める友次がいた。普段見ないスーツ姿は実業家のようで、芸術家には見えない。いや、普段のサーフィン焼けした肌にシャツとジーンズという格好も、十分に芸術家らしくはないのだが。
「作品、どう思う?」
「友次の芸術は綺麗だけど、メッセージは複雑」
ポイ捨ては海だけに起こっているわけではない。町でも山でも、いとも簡単にあらゆる物が足元に捨てられる。それらは風に流され、水に流され、あるものは短時間で、あるものは何年もの時間をかけて、海までたどり着く。友次が解説する。
「海にたどり着きさえすれば、捨てられた物も何もかも波に飲み込まれて、泡のように消えてなくなると思うかもしれない。でも」
「そうじゃない」
「うん。一つ一つをよく見てごらん。例えばあの野菜の缶詰の缶。日本では見かけない野菜だと思わない?」
確かに。友次の指差す一つを注視する。気づいたことを口にした。
「ラベルに書かれてある言葉、何語?」
友次が困った顔で「さあね」と答える。
「英語や中国語で書かれたものもたくさんあるけど、それだけじゃないよ。世界にはどれだけ国があるんだっていうくらい、色々な国の言葉で書かれたものが日本にたどり着く」
「へえ。ということは、日本からのものが、想像もつかないような遠いどこかの国で見つかることだってあるよね」
「そうそう」
世界地図が頭に浮かび、矢印だけが地図上を移動する。
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