パーティー

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箱を開けると、雑誌で見たことがある、高級時計が入っていた。 雑誌で見ていた、確か数十万円するようなものだ。 「どう?  今回は、かなり奮発したんだ。  驚いた?  ミクちゃんが、雑誌でこの時計を見ていたのを俺は、知ってたんだよ?  これは、俺の気持ちを形で表したんだ。  さあ、付けてあげるから、腕を出して?」 言われるまま、右手を出す。 「違うよ、ミクちゃん。  時計は左手に付けるんだ」 そう言って、左手に時計を付けられた。 金属の冷たい感触に、心が固まる。 「わぁ!すっごい似合ってるよ!  ミクちゃんの白い肌にぴったりだ!」 神様………誕生日くらい、ワガママを言ってもいいですか? 「あたし……クツが欲しいって言ったのに……」 「……よし、ご馳走を一緒に食べようよ!今日はミクちゃんが大好物の…」 「クツがほしいって言ったのに!」 「……ああ、ミクちゃん、今お腹空いてないんだね?  よし、じゃあ一緒にバーチャルゲームをやってみようか?  俺もやった事ないから…」 「ク・ツ・が・ほ・し・いっ!」 「おい………何言ってんだよ?  ……ミクちゃんには……クツなんか……いらないでしょ?」 「…………」 「そんなに、お前がクツを欲しがるんなら………履けないように………切るか?」 「……………いえ…………いりません」 怖くて身を引いたあたしの首元で、カチャッと音がなる。 男は、あの時の顔に戻っていた。 3年前、私を初めてこの部屋に連れて来た時の………あの顔に。 あたしの名前は、ミクじゃない…………アズサだ。 神様は……いないんだ。
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