マンハッタン

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今日もまた、看板に明かりが灯りました。 毎日の繰り返し… 梅雨も明け、夏の暑さも終わりに近づきはじめた今日この頃。 マスターは何やら、マッカランのボトルを拭きながら物思いに耽っている様子です。 他の二人というと、例によって、終わりのない議論をはじめます。 ですが、様子が少し違う様です。 「佐伯様のお連れの、ええと、リエさんだっけ?あの方はキレイよねぇ…なんか、素敵な女性はマンハッタンって感じがしてきちゃった。」 黒川が屈託なく話します。 「そうだね。マスターが言ってた通り、やっぱり雰囲気や振る舞いだね。いつも笑顔で、とっても素敵な方だなぁ。」 見習いバーテンダーの石渡が答えます。 「あっ。そう言えば、マスターあの時、素敵な女性が飲んだカクテルの話し、途中で佐伯様がいらっしゃったんですよね?あの時は、なんておっしゃったんですか?」 石渡が思い出した様に言います。 「マンハッタン………」 マスターは一言呟く様に言いました。 ああ、この偶然は何かを感じさせますね…そう思うのはわたくしだけでしょうか? 二人は、すごい偶然とか、さすがマスターとか言いながらまたお喋りを続けます。 佐伯様が、リエ様をはじめてお連れになってから、何ヶ月かたちますが、あの後もお二人で月に2度程のペースでご来店くださいます。 リエ様はすっかり顔なじみとなり、黒川も石渡も打ち解けております。 ですが、ここ1ヶ月程、お二人共お見えになりません。 マスターはまたボトルに目を落とし、何かを考えている様子。 「マンハッタンか…」 小さな声で呟いたのを、わたくしは聞き逃しません。 そうこうしているうちに、ちらほらとお客様がいらっしゃいました。 背広姿のサラリーマン二人連れ、なにやら盛んに話し込んではくすくす笑う若い女性の四人組み、一人静かにグラスを傾ける老人、いろいろなお客様がそれぞれの生活、人生についてを語り合い、そして、お酒と一緒に飲み込むのです。
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